梅雨の晴れ間に

拝啓 

 

二神ちとせ様

 

 

今年はいつものジメジメとした梅雨とはうってかわり、人間に容赦無く牙を剥く梅雨となりましたが、そちらは大丈夫でしょうか? あなたが住んでいるところは、災害の少ないところとはいえ、いささか心配です。あなたはとても家を大切にされる方だから、洪水の中でも「家を守る!」などと言ってそうです。誇張しすぎでしょうか? こちらは、時々晴れ間も見えていましたが、そろそろ前線が近づいてきたようです。雷も鳴っています。地元にいた時分には、毎日のように聞いていたから、こう時々にしか雷に遭遇しないのは少し物足りなく寂しい心地がしますが、平穏な天気の方がやはりいいでしょう。さて、次に梅雨の晴れ間が見えるのはいつになるやら。

 

さて、本来ならば、先月の末にでもそちらに伺って、色々とお話しをしようと思っていたのですが、如何せん某ウイルスが収まらず、計画倒れになってしまいました。その代わりと言ってはなんですが、こうして筆をとっている次第であります。「便りのないのは良い便り。いらぬ気遣いは無用」と突っぱねられそうですが、それでは私の気が済まないのでお書きします。

 

そういえば、最後にお会いしたのは、3月か4月でしたっけ。もうかれこれ3ヶ月ほど経ちます。あの時もたわいのないことを話し、また貴重なご意見も頂戴したものです。あの時に言ってもらった「置かれた場所で咲きなさい」という言葉は今でも胸に大事にしまってあります。この言葉は自粛期間中にも役立ちましたし、就職活動なるものにも役立っています。しかし、私はあの時就職のしの字も出さなかったのに、どうしてあなたはこの言葉をくれたのでしょう?あなたは昔から不思議なところがあった。そのフシギナチカラの源をぜひご教授願いたいものです。そしたら、就職活動なんてものは辞め、その技術を元手にビジネスに励み、何倍何十倍にもしてお返しするのに。いえ、冗談です。あなたの怒る顔が見えたのでやめます。あなたは普段優しいけれど、怒るとどうなるか分かったものではない。普段仏のような顔をしてる人ほど、そういう時は怖いものです。失敬失敬。

 

次お会いできるのは8月ごろでしょうか。就職活動云々にも左右されそうですが、8月、9月のどちらかで会えれば。その時また相談に乗っていただくと思いますが、そういえば、最近近場によくお話しする人ができて、その人とも色々お話ししています。日常生活については、少し不思議なことをおっしゃる人ですが、学問に強いとあって、その辺のアドバイスは鋭い方です。この前会った時も、早く目標を立てて、勉学に励めと言われました。そういえば、あなたもその手のことはおっしゃっていましたね。昨年はその手の忠告を無視したために、大変痛い目を見ましたから、今学期こそはと頑張っております。やる気だけは十分。あとは空回りにしなければ。

 

そうこうしてるうちに、雨の音は静かになってきました。らい様もどこかに行ってしまったようです。また明日には梅雨の晴れ間が見えるのかしらん。あのうっすらと差す光に反射する葉っぱの雫にはどことなく惹かれるものがあります。雨があるから晴れの有り難みがあって、晴れがあるから雨の有り難みがあるのでしょうか。後者に同感してくれる人は全くいなそうですが。梅雨の晴れ間というと、犬塚勉の絵を思い出します。あなたはご存知でしょうか? 昔テレビで見て知ったのですが、絵画なのに写真のようでとても綺麗でした。このご時世実物を見ることは叶わないけれど、インターネットでもぜひ見ていただければ。こういう風にまた太陽を仰げる日が、何も心配せずに仰げる日が来ればいいのですが。あなたの元にまた行く日はそうであってほしいものです。

 

露照らす梅雨の晴れ間に差す日だに

あらせば心のどけからまし

 

 

敬具